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街や音楽やその他のものについてのあれこれ。

安藤美姫、来季で引退

って云うニュースが流れている(ここではJ-CASTニュースフィギュア・安藤美姫選手、来季限りで引退 「もういちどゼロからやり直す覚悟で」と云う記事にリンクしておく)。

溢れんばかりの才能に恵まれた、天才肌のスケーターだったのは、間違いないと思う。身体能力、表現力。それが本人の勝負師的な性格とも相俟って、満身創痍のフィジカルをひっぱって競技の最前線にいつづけさせたのは、彼女にとって幸運だったのかどうか(肩関節の恒久的な故障で、たとえば彼女はビールマンポジションをとることが「不可能」なのだ)。

ひどくアンバランスなスケーターではある。同じ天才肌であっても、自分の才能を自分でついぞ信じることができなかったのが、荒川静香との違いなのだろう。結果、そのことが世界中のどんなスケーターとも似ていないエッジィな演技を生み出してきたのだ、とぼくは思う。

トリノの結果をもって、彼女のメンタルは(ライト層からディープ層に渡る数多くの「フィギュアスケートファン」に)潰されてしまった。女性スケーターが円熟へ向かうタイミングを、彼女は奪われてしまったのかもしれない。精神面での幼さ、自信のなさは、多くの指摘があるとおりだと思う。でも、忘れてはいけない。彼女はそれ以降2度も、世界女王の座を獲得してみせているのだ。

自分で自分を信じられない。だから、だれか信じさせてくれる存在を必要とする。信頼できるコーチを確保できない状況で、引退を考えるのは(彼女としては)ある意味で自然なのだろう。

このあたりは日刊スポーツのインタビュー、美姫、来季引退へ/独占インタビューと云う記事でもうかがい知ることができる。

ここしばらくのアイスショーでの彼女の演技は、それでも競技者としてではないスタンスではまったく違った種類の魅力を示すことができる、と云うのを知らしめてくれた、と思う。それはそれでいいし、素敵だ。

でも来季、表舞台で闘うことができるのなら。少々の破綻をものともしない、猫科の手負いの肉食獣のぎらついた魅力を、せいいっぱい示してもらえないだろうか、なんて思う。ひどく個人的な話になるけれど、ぼくは彼女のそう云う側面に惹かれつづけてきたのだから。

# でも、ちょっと思うけどね。来年は競技を続けられる環境が整って、気分が変わってしれっと撤回しちゃうかも、みたいに。