フィギュアスケート2010年ロシア杯
グランプリシリーズは毎年1選手2試合が出場の上限で、その成績にファイナルの出場が賭かる。と云うわけで、各試合なんと云うかカードの妙、みたいなのが生じる。今試合では、なんだかそれをつよく感じた。あのメンバーなら安藤・鈴木のワンツーはまぁ当然でもあるし、同時にフリーでザヤックルールにひっかかったにも関わらず7位に入った羽生結弦は健闘した、みたいにも云える。変な感じだけどね。
うちの国の看板3枚がこぞって不在とは云え、トマシュにPチャン、アボットと顔を揃える男子シングルは忌憚なく云って今季グランプリシリーズ屈指のゴージャスさ、と云ってもいいんじゃないかと思う。でもって優勝したのはいちばん安定した演技を見せたトマシュ。むらっ気が災いしてか実力のわりにここのところ勝ちに恵まれなかったけれど、本来の格から云ってまぁ納得の結果、と云うか、裏側からクァッドと云う要素の重さを示すことになったとも云えるかも。
本来名うてのクァッド・ジャンパーのひとりとも云えるトマシュが回避、トライしたPチャンもアボットも失敗したあげくに消耗のつけが影響してどうにも精彩を欠く演技に、なんて展開は、要するにいまも4回転ジャンプと云う技がきわめて大きなリスクを伴うものだ、と云うのを如実に示している、と思う。単純に成功・失敗の点数の影響だけではなく、それを跳ぶかどうか、と云うセレクトの演技全体に及ぼす影響の大きさ、と云う面で。
今大会フリーでの結弦は最初のクァッドを3回転に留める、と云う決断をした分、NHK杯の時よりも後半に体力的な余裕が残っていて、最後まできっちりと演技をこなすことができたように見えた(でもザヤックルールにひっかかるのだけは勘弁してくれ。うつけじゃないんだから)。
まぁ存分に揉まれた、って点では今大会への出場もよかったんではないでしょうか。次は全日本。
ところで今期から、個人的アイドルとしてクァク・ミンジョンにアグネス・ザワツキーが追加されております。4位は立派。
あと今季アシュレイはほんとに調子がいいんだなぁ。スタイルのよさが映える演技で、フリーはじつにすばらしかった。
安藤美姫のフィギュアスケート選手としての最大のアドバンテージは、じつはそのスタミナにあるのではないか、と云う気がすこししてきた。考えてみると、けがや体調・メンタル面での要因以外で、彼女が演技中に失速する姿はあまり見たことがない。と云うか、やぶれかぶれのような状況で振り絞った気力に潜在的な体力がみごとに応えるかたちで、結果的に最後まで身体を駆動させ続ける、みたいな試合を何度か見た気がする。
SP5位ってニュースを聞いたときにはなにが起きたんだとか思ったけど単に激戦だっただけ、って話で、フリーでは安定感あふれる(って形容を彼女に使う日が来るとは思ってもみなかった)横綱相撲的演技で今期2勝目。メンタルの安定もあるんだろうけど、それより今期はすばらしくフィジカルが充実してる、ってことのように思う(そう云う安藤美姫に複雑な思いを抱いてしまう、ってな個人的な事情はまぁこの際どうでもいい)。
で、2位入賞・ファイナル出場決定とは云え、今期まだあっこちゃんの演技はできあがってないみたい。そう思うことにする。もっと期待することにする。