Chromeplated Rat

街や音楽やその他のものについてのあれこれ。

うそのつきかた

水素水について、国民生活センターの文書が発表された。これに関していくつか報道があるけれど、ここではエキサイトニュースにリンクする。

www.excite.co.jp

ニセ科学についての議論の周辺で水素水についての話題が出てきたのは相当前で(とか書いておかないと「ニセ科学を取り沙汰する連中は水素水を見逃していた」とか云ってまた珍妙な陰謀論めいたことを云われたりする)。たぶんapjさんが取り上げたのが発端だったんだろうな、とか思うけど、apjさんのサイトも構成が変わっちゃって当時の状況を追うのはちょっと難しい。
うちで触れたのはこのへん。

schutzengel.hatenablog.com

2008年ですね。ずいぶん前。
ちなみにこの時は作家の瀬名秀明さんとの絡みがちょっと生じて、話がちょっとだけよけいな方に飛び火したりしたんだけど、まぁそれは余談(上のエントリからリンクしてある瀬名さんのブログももうないようですね)。

で、この時点ではどうも水素水についてはニセ科学であるかどうかは微妙で、問題は東京医科大の太田成男教授の情報発信があまりよろしくないって部分にあるのではないか、みたいな捉え方をぼくもしていて。
でもこのへんの捉え方はちょっと違っていたのかなぁ、みたいにいまは思う。ってのは確か当時は太田教授が共同開発者として名を連ねるサプリメントなんかは売ってなかったし。

水の素(みずのもと) - 2人のスペシャリストが共同開発した、元祖水素サプリメント

まぁこれは飲料としての水素水じゃないからいい、ってことなのか。でもこのページのどこにも、含有する水素濃度についての具体的な数字の記載はないなぁ。

このへん分業体制なのか、太田教授のご子息であり、水素水を商品化する水素健康医学ラボ代表取締役かつ分子状水素普及委員会の理事である太田史暁氏が、飲料としての水素水である「仙寿の水」にお墨付きを与えたりしてる。 

体験談シリーズ!水素水「仙寿の水」を飲んでみた

家族のやることにも利益相反の誹りは生じると思うのだけれど、このへんあまり明るくないので断言できない(生計を一にしてなければいいのかな)。

上のリンク先準拠すると、とりあえずこの「仙寿の水」については太田史暁氏は水素は、とり続けることがが大切です。って述べてらっしゃるようで。ともかくこの、信じて続けろ、ご利益が出るまで続けろ、みたいなスタンスは、医療に関わるニセ科学では一般的ではある(特にビジネスが絡んでいる場合には。中途離脱者を出すのは望ましくないからね)。

ニセ科学、ってのはその体系が100%うそである、みたいなもののほうが珍しくて。まぁあたりまえの話で、それじゃたいていのひとは、科学的な体系である、みたいにみなしてくれないから。うそをつくには、大半の事実の中にちょっぴりの虚偽を混ぜるのが効果的。
水素摂取に抗酸化作用があるのも、それが健康によい効果をもたらすのも、現時点で完全にうそだとは判断できないし、そこのところは太田教授がこれからきっちりと明らかにしていってくれるのかもしれない。でもそれはいまの段階では、市販の水素水を飲むことがダイエットだのアンチエイジングだのデトックスだの血液サラサラだのの面で水道水に比較して特異的効果を持つ、と云うことを即刻意味するわけではない。

有用ではない、と云うわけではかならずしもないけれど、本来謳うことが可能な範囲を超えて有用性を主張する、と云う面では、まぁ構造としてはEM菌にも似ている。

blog.goo.ne.jp

こう云うニセ科学における、事実をタネにしてそこから風呂敷を広げていく、みたいな手法にはいろいろあって。ことばの持つ表面的なイメージ喚起と連想を利用するものとか、人間の呪術的な感受性や教条的な倫理観を利用するものとか。
そのへんを考えるだけでも、ニセ科学は科学だけの問題ではない、と云うことになるのだと思う。