云うに事欠いて
ホメオパシージャパンの代理店をされている奈々さんの向精神薬について。と云うエントリを読んだ。
「現代医療の矛盾」と云うテーマを当てられているので、通常医療の問題点を指摘してご自分の職業をバックアップする、と云う意図がおありなんだろうけど、なんかちょっと無責任なことを書きすぎのような。
ちなみに精神疾患に対する代替医療、と云うものについてのぼくの認識はこっちに書いたような感じ。もちろん精神科医療を概観する視点、なんて云うのは持ち合わせていないけれど。
このエントリ、最初にでてくる某氏の名前でまず脱力するんだけど、それはそれとして。
向精神薬とは、一応医薬品となっているがアル意味合法的なドラッグだ。
なぜならば、耐性が出来て効かなくなってくるし、依存性はあるしで、特に薬が切れると大変な不安感に襲われるケースが多い。
ドラッグ
と云う言葉を麻薬、と云う意味で使っているのがわかるので揚げ足をとってもしかたないんだけど、でも捉えようによってはアル意味合法的なドラッグ
と云う言い回しはおもしろい。そのとおりとも云えるし。ところで耐性が出来て効かなくなってくる
とか依存性はある
って云うのはどの向精神薬にもひとしなみに云えることじゃないんじゃないか、と思うのだけどどうか。中枢神経刺激薬を別にするとだいたいの向精神薬には依存性はとくにないはずだし、耐性が生じる、ってケースもないはず(身内の精神科医から裏を取ってます)。ひとことで向精神薬って云っても(仮に抗うつ剤に限ったって)作用も機序もいろいろあるよ。そこをごっちゃにして論じようとするのは単に雑なのか、それともなにか意図があるんだろうか。
要するに、向精神剤というものは、服用すればよく眠れたり、不安が消えたり一時的には
よい作用をもたらすが、依存性があり、抜け出せなくなる事により一度取り始めると長期に渡り服用しなければならなくなる。
要するに
じゃなくて、だからそれってどの向精神薬よ。そう云う作用のあるものもあるけど、そうじゃないものもあるよ。あと離脱症状を避けるために徐々に減らすことはあるけど、依存とは別の話なんじゃないかな。
向精神薬は、合法的なドラッグと呼ばれ、薬が売れる事により、人々の精神は蝕まれ、依存させる事により、製薬会社、病院が儲かる仕組みになっています。
呼ばれ
って、あなたが呼んでるんでしょうが(あなたの信頼する陰謀論者もそう呼んでるかもしれないけど、世間ではそうは呼びません)。てえかなんかこれ、毎度でました、としか云いようがない感じだよね。あなたのお店で売っている砂糖玉はだれも儲かる仕組み
にはなってないの? なんか30粒で1,000円以上とか云う値段がついてて、サクマのドロップスよりだいぶ高いみたいだけど。
昔は、向精神薬など無かった。そして、私たちのご先祖様は、色んな事を乗り越えて力強く生きてきました。
見たんかあんた。
本当に、自分に必要か深く考える必要がありますが、依存してしまうとその思考力さえ、奪われてしまいます。
と云うかそもそも患者は多くの場合本当に、自分に必要か深く考える
ことなんかできない状態にあるんだけどな。深く考えろ、とか云われたらひとによっては(おおげさじゃなくて)死んじゃうかもよ。鬱の状態にあるってことがどんな状況なのか、すこしでもわかって(わかろうとして)書いてるのか。
ホメオパシーでも、対処できます。
ストレスがかかると、ミネラルが消費されます。
そこで、ホメオパシーでは、体の必須ミネラルである、亜鉛や、カリウム、リン、カルシウムなどのレメディーを取ることで、改善に導きます。
ホメオパシー的には、うつ病の原因はミネラルの不足にある、と捉えてるんですか。それってほんと? てかそれ以前に、レメディにはミネラルは入ってないでしょ? 入ってたらまずいでしょ? ミネラルのレメディなんか摂ったら、毒出し作用で身体からミネラルが排出されちゃう、ってお話にはならないの?
医者から処方されたからと言って安易に取らないでいただきたいお薬の筆頭が、向精神薬です。=合法的なドラッグという認識を強くもっていただきたいと思います。
繰り返すけどあなたが=合法的なドラッグ
だって呼んでるだけだよね。こんなことを云っていると場合によってはひとを死なせることになりかねないんだけれど、そう云う自覚とか覚悟はあるのかな。精神疾患を甘く見てない? で、これに続く向精神薬について。2と云うエントリもあがっているんだけど。
こっちはどうやら陰謀論者らしい小野寺光一と云うひとのメールマガジンのほぼ引き写しで、でもってこれもひどくいい加減なしろもの。作用機序のまるきり違うリタリンとパキシルをごっちゃに論じてるし(たぶん区別がつかない、と云うかつけるべきだとも認識してないんだろうな)、いまは抗うつ剤としては使われていないリタリンを昨今の猟奇的な事件の原因として断じてるし。
適当に脅して商売繁盛って感じなのか、信じるゆえの善意にもとづくものなんだか知らないけど、これじゃホメオパスってのは予断まみれのいい加減な知識に基づいて無責任に精神疾患について語るような手合いだ、ってのを示しているだけに終わっちゃうよ。
薬ってのは基本的に毒で。向精神薬なんてのはあたまのなかをいじる薬だから、そりゃ濫用はまずいに決まってる。だから医師は患者の様子を見ながら薬を選んだり、増やしたり減らしたりするわけで、精神科医療とはべつの局面になるけど必要によっては麻薬そのものだって使うわけで(麻薬及び向精神薬取締法をはじめとする麻薬関係の法律は基本的に無資格での取り扱いを規制するものなので、その意味では原理的にはそれ単体として「非合法なドラッグ」ってのは存在しないとも云える、かも。法的に規制されてるのはその使用法、と云う話ですね)。
薬をたくさん使うことがいいことだ、ってことじゃもちろんないし、(教えていただいたばかりの用語をさっそく使うけど)有害反応だってもちろん生じうる。もちろんそこには処方した医師の、その判断にともなう一定水準の責任、と云うのも生じてくる。
代替医療が通常医療の代替として役立とうとするなら、ぜひそのあたりも同水準で担ってほしい、みたいに思う。ろくすっぽ議論の主題を理解しようともしない、適当な陰謀論を語るんじゃなくてね。