進歩のもたらすもの
先日のエントリで書いた、英国下院科学技術委員会がNHSのホメオパシー適用を廃止する結論を出した件については、関連情報を黒影さんがホメオパシーがようやく英国から追放されそうな件についてと云うエントリでまとめをお書きになっている(さらにそれをnofrillsさんが英下院の科学技術委員会の「ホメオパシーについての報告書」の件(記事リンク集つき)と云うエントリで補完されている)。
欧米では一般的だけど日本では巨大利権による陰謀によって迫害されている、と云うのが多くの欧米由来の代替医療の支持者や従事者のロジックなので、このへんの動きについてはどんな反応が見られるのかな、とか思ってたけど、あまり話題にはされてないみたい。まぁまだ議会による審議が実施される前だしなぁ。数少ない中で見かけたのが、アロマセラピストでいらっしゃるdeepmountainさんの英国では物議を醸しているそうですね、ホメオパシーと云うエントリ。まぁアロマテラピーは代替医療とはまた違う括りに入るもののようにも思うけどね(運用にもよるけど)。
代替療法はいつの時代も苦しいポジションです。
表舞台は歩めなくても、何百年、何千年と継承され、
決して人類から葬り去られることはなかった・・・。
(フォント指定タグを除去しています。以下同様)
この種の言説にはわりとありがちなんだけど、いつの時代も
ってのがいつの時代のことを云ってるのか判然としない。代替療法(代替医療)、ってのは通常の医療の対義語なので、通常の医療がある程度確立する前には存在しないはずだし、そのなかで効果の見込めないものが葬り去られる
時代がくるとすれば、それは基本的に今、とか、これから、じゃないんだろうか。
今の私たちが瀉血をあり得ないと思うが如く、
「メスとやらで体を切り裂いて治療している時代があったんだってね!」
と驚く日が、数百年、いや数十年後に来ないとも限らず・・・。
もちろん来ないとも限ら
ないと思うし、くるといいな、ともそりゃ思う。ひとあしとびにそんなところまで到達するかどうかはともかくとして、医学は進歩を続けている。
ただまぁ、その医学の進歩のなかで、ホメオパシーをはじめとするある種の代替医療は瀉血と同様にすでにあり得ない
と云うことがわかっているわけで。なので現時点で葬り去られ
ているものだと云う認識をそれらの支持者や従事者が持っていないとすれば、それは医学の進歩とは直接関係ない、別種のロジックに支えられたもの、なんだと思う。
それとは別の話として、ある種の事業が表舞台は歩めな
い状況にあることって、事業をおこなう主体からするとけして単純にネガティヴなことじゃないんじゃないかな、とも思う。表舞台で事業を行っていると、その扱うアイテムやサービスの価格が対価として適切であるかどうか、と云う視点からの評価がより厳しくなることにもつながるから。
ほら、例えば覚醒剤が合法化されたら、いちばん困るのは現在それをアンダーグラウンドに流通させている事業者なわけだし。公的な医療手段として認められて、砂糖玉にまっとうな値付けが求められるようになったら、利鞘はけっこうしぼむかもよ。
で、そんな昨今、某ホメオパシー業者は英国下院科学技術委員会の結論に対しなんら意見を表明しないまま、長妻大臣の発言に勢いづいたのか1年半ほど前からはじめている「ホメオパシーを支持します」署名運動をふたたびプッシュしはじめているのだった。