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街や音楽やその他のものについてのあれこれ。

伝えてほしいもの

toramomo0926さんのフィギュアスケート実況、日本はレベルアップをと云うエントリがはてなブックマークで発掘されていたので読んだ。ぼくがいい加減にごちゃごちゃ云ってきたようなことを非常にわかりやすく、ていねいにお書きになっている。すばらしい。

謳い上げるフレーズを考える時間があったら、また不必要なコメントをするのであれば要素の簡潔な説明、解説についてのスキルを磨いてほしいと思う。それがまっとうな実況・解説のあり方なのではないか。

もう、これは同感。

荒川静香の解説を絶賛するつもりはない。彼女はまだ喋るべきところ、黙るべきところを判別するスキルが充分ではないと思うので。

それでも、例えば今年のNHK杯浅田真央のフリー。
真央は最初に予定されていたジャンプが単発になってしまったけれど、そのミスを次のジャンプをコンビネーションにすることで補って、ぶっちぎりの優勝を果たした。そして放送のなかで、ふたつめの予定外のコンビネーションジャンプを真央が踏み切る前に、荒川静香は「いきますね」と断言している。フランス杯からこの短時間で持ち直してくる真央のメンタルの強さを踏まえ、今大会での調子を見抜き、そして(本来どちらかと云うと苦手だった「演技中に構成を変えて帳尻を合わせる」と云うようなコントロール能力を身につけた)ここ数年の真央の伸びを理解して、そのうえで次のムーブを事前の動きから読み取る眼を持っていないと、このさりげないひとことは絶対に口にできない。ゴールドメダリストの力量、と云ってしまえばそれまでだけど。
この言葉で、このプログラムの中で真央が「なにをなしとげようとしているのか」を、ぼくは見逃さずにすんだ(あとからつれあいの指摘で気付いて、ちょっと鳥肌が立った)。伝えてほしいのは、そう云うもの。

ぼくを含めテレビの前の素人には、演技の評価は力量のあるアナウンサーと解説者の言葉がないと理解できないことが多い。今年のGPファイナルにおける安藤美姫のクァッドへのトライに異様なくらい注目が集まらなかったのは、(放送された連続写真で見ればぼくら素人にも数えられる)その回転数を、信じがたいことに解説者である伊藤みどりが見逃したことにも大きな原因があると思う。

正直、民放テレビ局はフィギュアスケートの放送に触れる視聴者が「なんにも理解しないで煽りに乗る、コントロールしやすい馬鹿」であることを期待してるんだろうと思うし、そう誘導する試みは相当水準で成功していると思う(荒川静香に向けて「選手の贔屓が云々」とか云うような浅田真央ファンと云うのがいまでも実在しているのか確かめてはいないけれど、おそらくまだいるんだとすれば、それこそ民放の意図が実現していると云うことだ)。
でも、競技の見方をちゃんと理解していないぼくのような素人でも、ちゃんとそこを理解したい、と思ったりすることはある。そして、そこを理解するだけの材料は、放送席から伝えてほしい、と思うのだ。

あとついでみたいで申し訳ないけど、こちらの増田さんのエントリも良質だと思うのでここでリンク。