読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Chromeplated Rat

街や音楽やその他のものについてのあれこれ。

交雑と本質

なんかこちらのエントリで書いたりTAKAさんとコメント欄でしゃべったりしたことからちょっと考えた思い付きをつらつら、だらだらととりとめもなく適当に。黒人音楽のこととか。

うちは諸々の事情があってカリブ海、それもキューバの音楽となじみが深い家庭で。関連して文化的にもこまごまと輸入されていたりして、結果なぜか帰宅すると晩飯の献立がコングリ(キューバの豆ごはんですね)だったりするみたいな微妙な状況もあったりするのだけど、まぁそれはそれとして。

カリブの音楽全般にそれほど造詣があるわけじゃないんだけど、とりあえずキューバ音楽については、基本的に南欧由来のメロディとアフリカ由来のリズムが衝突して、混交して生まれたものだと思う。ラテン音楽、と云うけれどリズムはナイジェリア辺りから持ってきたもの、みたいな感じ。それからハバネラみたいに、ヨーロッパに再輸出されたりして(Wikipediaによるとさらにそれがアルゼンチンに輸出されてタンゴができたとか書いてある。まじかよそれ)。

サルサ(ティンバ)とかソンとか、けっこうポップミュージックとして耳にするものは、そう云う成り立ちで耳なじみのいい(演歌くさいとも云うかも)メロディと複雑なリズムが特徴で。で、もう少し土着っぽいと云うか、宗教儀式とかに使われる音楽はもっとアフリカから入ってきた際のなまのスタイルを残してるっぽくて、強烈なシンコペーションポリリズムでめまいがしそうになる。ルンバ(RhumbaじゃなくてRumbaのほう)なんかもそういう部分が濃厚に残ってる。
まぁこの辺、混交具合もさまざまで。混交具合、って話になると多分ブラジルも同じで、アフリカ成分が多いとサンバができて、ヨーロッパ成分が多いとショーロになって、みたいな(この辺はもう知識があやしい)。

で、ヨーロッパ由来の音楽が土着化してその地域の音楽として発展した、と云う例だと、ぼくがわずかでも知っているジャンルとしてジャワ発祥のクロンチョンがある(これも詳しくはないけど)。クロンチョンはポルトガルの音楽とインドネシアの土着音楽が混交して生まれたとされていて、特徴としては演奏時の構成にパーカッションが加わらないこと(リズムは複数の弦楽器が担当する)。で、考えてみるとファドもパーカッションの加わらない演奏形態がふつうにあるので(そう云えば厳密にはファドに分類されないのかもしれないけど、マドレデウスも打楽器なしの編成だったなぁ)、この辺アフリカが入って来てないからだろうな、みたいに思ったり。
ジャワと云えばまぁ打楽器アンサンブルとしてのガムランもあるんだけど、ジャワ・ガムランって「ビート」の概念とちょっと遠い感じがする(バリ・ガムランのようなハイスパートな音楽じゃなくて、もっとのんびりした感じ)。聴く限りクロンチョンとの音楽的類縁性も感じられないし。

話がこの辺でキューバに戻るんだけど、代表的な信仰にサンテリアと云うのがある。どうももともとはナイジェリアのヨルバ族の信仰が持ち込まれたもののようで、神様の構成(多神教である)なんかは基本的に共通。で、これがラテンアメリカカトリックと混ざった。
混ざり方としては「この神様はじつはこの聖人」って感じ。キューバサンテリアの場合、イェマジャはマリア、チャンゴは聖バルバラ、ババル・アジェは聖ラザロ、その他もろもろ。なんか「南無八幡大菩薩」的な混ざり方なので妙な親近感が湧いたりして。同じような成り立ちのブラジルのカンドンブレも、習合の仕方は似てるみたい。

この辺の信仰は特に隠されているわけでもないようで、イラケレの「イェマジャ」ってアルバムのジャケットにはおさな児を抱いた黒いマリアが書かれているし、けっこう古い曲らしい"Que Viva Chango"と云う曲はいきなり地のメロディのうたい出しの歌詞が"Santa Barbara〜"だったりする(チャンゴはマッチョな雷神で太鼓の神様なので、なぜ聖バルバラなのかなんかへんな気もするけど、構わないらしい。うちにある音源はNG la Bandaのもの)。そう云えば「ブエナ☆ビスタ☆ソシアル☆クラブ」でも、故イブライム・フェレールが壁の聖ラザロに祈りを捧げるシーンがあったっけ(キューバじゃ聖ラザロ大人気だそうな。なんでだ。生き返るからか)。要するに、いま現在のキューバで生きている信仰なわけで。

なんかですね。この辺、音楽の話と信仰の話がずいぶん似通ってるなぁ、とか思ったのでした。カリブから南米の話をしてきたけれど、この辺は北米でも近い部分があると思う。ニグロスピリチュアルからゴスペルにブルース、R&Bの関係とか。 そう云えば少し前に誰かと故ボ・ディドリーの話をしていて、実はボ・ビートはキューバ音楽の基本リズムのひとつである3+2のソン・クラーベと同じだなぁ、とか気付いたのだった。ぼくらの日頃耳にするポップミュージックは多かれ少なかれほぼなんらかのかたちで黒人音楽の影響下にある、って事実を考えると、こう云うのって音楽の背骨なんだろうなぁ、なんて思う。

ついでに。

 

ご覧になった方も多いと思う。で、ご覧になった方はきっと、トリプル・ロック教会でのクレオファス牧師の説教と会衆の熱狂的なゴスペルのあとで、ジョリエット・ジェイクが啓示を受けるシーンを覚えてらっしゃるんじゃないだろうか。 "Do you see The Light?" "Yes! Yes! Jesus H. Tap-dancin' Christ, I have seen THE LIGHT!" コメディ映画だから誇張はあるけれど、きっとここにはいくらかの本質のかけらがある。本邦で大流行中の、しゃらくさいゴスペルもどきとは違って。