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街や音楽やその他のものについてのあれこれ。

茂木健一郎の新刊を読まない

茂木健一郎と云えば少し前に亀@渋研Xさんの「蒼龍のタワゴト」で「クオリア」を知ると云うエントリのコメント欄でどたばたやってご迷惑をかけたところなんだけど、知らないうちにこんなおいしそうなタイトルの著書が出ていた。いや去年出てたみたいなので新刊ではないのか。

すべては音楽から生まれる (PHP新書 497)

すべては音楽から生まれる (PHP新書 497)

  • 作者: 茂木 健一郎
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2007/12/14
  • メディア: 新書
 

ぼくが現時点で1冊も茂木健一郎の本を読んでなかったとしたら、多分このタイトルだけで買ってたと思う。でもいまのぼくは、彼の著書を鼻をつまみながら3冊も読破してそれなりの境地に至っている(ので、「散財はしたくない」と云う強い抑制が働く)。そう云うわけで、TAKESANさんの『ゲーム脳の恐怖』の書評に見る、ダメな批判および的外れな擁護、の例と云うエントリに倣って(と云うかかたちだけ真似て)、アマゾンの書評をベースに、この本を読むべきかどうか検討してみる。

しかし全員が五つ星だぞ。

脳科学者が体験的に語る、「音楽を聴く効果」に関する本。

科学者が自分の専門分野に関わることを体験的に語るな。

なぜ感動しているのか。何に感動しているのか。

その感覚が伝わってくる。

感覚を伝えるな。感覚を伝えるだけなら、「脳科学者」なんて肩書きのついてない、もっとうまいひとがたくさんいる。理論を伝えてくれ。

随筆のようなストーリーが
音楽に向けられた情感たっぷりの言葉で
織り出されている。
それは人間の本質を衝いていると感じる。

多分この情感たっぷりの言葉がくせものなんだろう。正直それは脳科学者としての知見とはなんの関係もないし、だからそれを期待するぼくのような種類の読者は肩透かし、と云うか手ひどいごまかしを目の当たりにしたかのように感じる。いや、情感たっぷりの言葉が悪いとは思いませんが、それだけでいいのなら脳科学者が書籍のサブタイトルに「脳」と云う言葉を掲げて書くようなものではない。

茂木健一郎は、新しい「クオリア」を発見したようだ。

頼むからそんなもの発見しないでくれ。そうでなくても「なんだか深遠そうな意味を持っているらしいよくわからないジャーゴン」として恣意的に使われていて、読み手(ぼくですね)に「どう読んでもどこかで聞いたようなひどく古臭いことを云っているようだけどどうもすごそうな用語を使ってるんだからきっと新鮮な話をしているはずだけど、うむむ」みたいな混乱を引き起こしているのがその「クオリア」なのに、そんなものに新しい意味を付け加えるな。それよりそもそも「クオリア」ってのが何を意味するものなのか、その「古い意味」をこちらにも分かるように、情感とかこもらない言葉で説明してくれ。

とりあえずこの本に五つ星の評価をつけるような読み手とぼくでは、求めるものがまったく違うことがはっきり分かった。彼ら彼女らを満ち足りた気分にさせるようなものは、ぼくは読みたくない。そう云うわけで、この本は読まない。
アマゾンのレビューは参考になるなぁ。