Chromeplated Rat

街や音楽やその他のものについてのあれこれ。

いかとん

と云う言葉があった。いまでもあるようだ。(1)
この辺で一番大きい国立大学の男子学生の垢抜けなさを揶揄して、「いかにも○○」だ、というふうに使う。

行ってみたことのなかった近所のイタリア料理屋に、つれあいと昼食で出かけてみた。それほど値の張らないランチにはドルチェがついて、日曜日に食べられるランチとしてはそこそこだった。

ぼくたちが座っていた席の隣で、学生がデートしていた。まぁそれほど背伸びしなくても食べられる価格設定のランチだ。ぼくが座っているところからは、一生懸命喋っている男の子の姿が見えた。黒いジャケットにデザイナー系のTシャツ、細身のブラックジーンズにレースアップのブーツ。短めの茶髪にピアス。全体に、主張はあるけれども嫌味がない、と云う感じにまとまっている。

で、この子が一生懸命話すのだ。
自分の大学の工学部はAボーイ系のヲタが多いが、自分の所属する建築科にはデザイナー的な側面もあるので(自分を含めて)結構かっこいい奴も多いこと。
男の子が行く大学としては仙台でいちばんメジャーな私立大の名前を挙げて、それに較べて自分たちがいかに大変な勉強をしているか(一概に云えないと思うぞ少年)。
自分は英語も出来てTOEICも500点を超えていて、これは全国の国立大生の平均を超えていること(TOEICで点数の議論になるのは730を超えてからだと思っていたが)。
云々、云々。
またこれに、デートの相手の女の子も一生懸命(多分男の子の予想を外さない範囲を意識しながら)リアクションする。
まぁ、楽しそうで、微笑ましくはあったんだけれど。

少年よ。
きみはセンスも悪くないし、見た目も悪くない。勉強もできたし、いまもできるんだろう(専攻にもよるだろうけど、学部に上がってからの建築科は結構大変なはずだ)。
でも、20年前もいまも、きみのような言動を「いかとん」と云うのだと思うよ。
多分、20年前にぼくが、いまきみの隣に座っているぼくのつれあいにそう呼ばれていたように。

(1)
この言葉に対になる言葉として、この辺唯一の国立の教育大学の学生を称して、「やっぱり○○」と云うニュアンスで使う「ぱりみや」と云う言葉も局地的に流通していた。さすがにこの言葉は消滅したんだろうなぁ。