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街や音楽やその他のものについてのあれこれ。

Generations(2016年度 フィギュアスケート全日本選手権)

今季、フィギュアスケートについてのエントリを書いていない。理由はあったんだけど、まぁ大した理由じゃないのでそれはいいとして。

今年の全日本選手権で、浅田真央が12位に終わった。

女子シングルについては最近は国際大会でもジュニアから上がってきたばかりの選手が凄まじい強さを見せることが珍しくない。いまの採点基準がそれくらいの(体型変化が生じる前の)世代の選手にとって優位になっている、と云うことはあるのだろうけど、見ていて感じるのは当然それだけじゃない。ジェーニャチカにしたって、あの演技が単なるジャンピング・ビーンのそれじゃないのはだれにでもわかる、はず。

育成体制によるものなのか、一定の間を置きながら黄金世代が生まれる、と云うことでもあるように思える。
今回の全日本選手権女子シングルの表彰台は、宮原さん、わかばっちょ、三原さんの順。真凜ちゃんと理華ちゃんが続く。最年長の理華ちゃんが20歳で、わかばっちょと真凜ちゃんは15歳だ。対して22歳の佳菜子が8位、26歳の真央が12位。

世界ランキング1位の宮原さんにはなんの文句のつけようもないのは当然として、若い世代の好成績はどれもフロックなんかではない。わかばっちょは恩ちゃんを、真凜ちゃんは由希奈はんを連想させるけど、どちらも同じ年齢のころの彼女らを総合的に凌駕している。
たぶんロシアン・ドールズに少し遅れて、黄金世代が訪れた、と云うことなんだろう。もちろん(とりわけ女子選手でもあるので)先行きはわからないけれど。

タイミングとして、トリノオリンピック前の女子シングルを連想する。村主・荒川・恩田に安藤さんと真央が追いつき、追い越そうとしていた時代。そう云う局面に、真央がいま追われるものとして直面している、と云うことなんだろう。

togetter.com

村主さんのように続けること。ヨナ・キムや荒川さんのように退くこと。どちらがアスリートのあるべき姿なのか、みたいなことはわからないけれど。

ただ、ぼくは見てきたなかでいまの真央の演技がいちばん好きだ。Girl、ではなく、Womanの演技。それは例えば、アシュリーのいまの演技に感じるものと同種の、経験豊かな女子選手のみが持つ魅力。


男子については女子と違って、ジュニアからシニアに上がってそのままトップに、ってケースはそれほどない(ボーヤンやネイサンみたいな例はあるにせよ)。結弦とダイスを欠いた今大会で、昌磨・無良くん・デカで表彰台、ってのはまず妥当。ってかここんとこ昌磨の漂わせる雰囲気がどんどん男臭くなってる関係もあって、なんか「男の色気ショーウィンドウ」的なお立ち台になっている。

まぁこれが、武史・大輔の流れを汲む日本男子の正統。でも世界選手権と四大陸への派遣がどう割り振られるのか、ちょいとややこしくはあるよなぁ。


ところでトリノの頃と比較していまのぼくらが恵まれてるなぁ、と思うのは、地上波放送の解説席に荒川さんだけじゃなくて、織田のうつけがいてくれることじゃないかなぁ、と思う。

荒川さんが現役を引退してフィギュアスケートの解説を始めたころに、ちょっとしたバッシングがあった。これについては、当時ちょっと書いた。

schutzengel.hatenablog.com

技術的な正確性を重んじる解説が嫌われた、みたいな話ではあったんだけど。まぁ当時は平気な顔して「女子で4回転飛べれば優勝だろ」「トリプルアクセル飛べば金メダルだろ」みたいなことを口にする手合がテレビの前にどっさりいる時代でもあったんだけど。
荒川さんとうつけの似ているところは、引退してからも自分自身の現役時代の技術水準を保とう、と云う姿勢(荒川さんはさすがに衰えてるだろうけど、うつけは当時よりうまくなってる説あり。そもそもうつけの場合現役当時の問題点は技術じゃなくハートにあったわけで)。だから、解説と実際の採点が乖離しない。このへん、教える立場の武史よりもより正確だ。
ついでに云うと明朗なキャラクターとしゃべくり上手なタレント性、ありあまる才能を裏切り続けた繊細さがプラスに働いて、発する言葉が視聴者に反感を抱かせない(いや、あらかーさんもけっして冷たいひとだったりはしないんですよ。あのひとはド天然なだけで)。選手たちと根っから仲良しで、心の底から応援しているのが誰にでもわかって、それでも押さえるべき勘所は外さない(ので、採点結果についてへんな陰謀論みたいなのが蔓延することも減る)。

フィギュアスケート「ブーム」みたいなのがあった頃に、こんな解説者がいてくれたらよかったのになぁ。