Adiós, Comandante
フィデル・カストロが死んだ。
「私は地獄に落ちるだろう」 世界を揺るがした革命家、フィデル・カストロが語った苦痛
人生の半分以上を暗殺者に狙われる日常のなかで過ごしながら、90歳まで生き永らえる。痛烈な皮肉のようにも見えるけれど、その皮肉は誰よりも彼自身に向けられているように思える。
神格化を徹底して拒み続けたまま、英雄として生き続けること。半世紀以上を(マチズモの文脈を踏まえたうえで)英雄としてふるまいつづけること。それがどんな人生なのか、まぁぼくなんかにはよくわからない。
はっきりしているのは、「生き続ける」ことで自ら一定の水準に食い止めてきた神格化・象徴化がより進むだろう、と云うこと。キューバ国内においてのみ、ではなく。それは、盟友チェとおなじ道だ。
いずれにせよキューバの今日は、この類を見ない個性のもたらしたものだ。それがこれから、より現実的で、より「汚い」(それでもやはり)英雄であるラウルのもとで、どのように変化していくのだろう。もちろんぼくなんかが「フィデルのキューバ」を想うことは、感傷以上のものではないのだけれど。