Chromeplated Rat

街や音楽やその他のものについてのあれこれ。

フィギュアスケート2015年世界選手権

リーザ。リーザ、リーザ!

エリザベータ・トゥクタミシェワの名前が、ぼくみたいなライトファンにはあまり聞こえてこなくなっていた。いまちょっと戦績を見てみると前季も前々季も相応の結果が出ていたので、これは単にソチオリンピックの出場を逃した、と云うだけの話なんだと思うんだけど、綺羅星のごとく才能の乱立するいまのロシア女子のなかでは、相対的に(あのシニアデビューの年と比較すれば)スポットライトの当たった報道が少なくなっていて、そうなるとぼくなんかにはなかなか届かない。

今季見たリーザには、2011年のスケートカナダで鮮烈な優勝を飾った小さくて華奢ででもおとなびた少女、みたいな面影はない。けぶるようなダークグリーンの瞳こそ変わらないけれど、いまの彼女は、10代なかばの多くの女子選手に訪れる試練をこのうえなく見事なやりかたで真っ正面から乗り越えた、そのままのスタイルで成熟に向かいつつあるスケーターに見える(それでもまだ18歳なんだよなぁ)。そして、かつて同じ技を成功させたどの女子選手にも似ていない、トリプルアクセル。自然で、かろやかで、たおやかな。

おなじロシア女子で云えば、レーナチカが(その愛称がちょっとそぐわないくらいに)大人っぽくなっていて、ちょっとびびったり。そう、この年代の女の子って、こう云うスピードで変わっていくんだなあ。

成熟、と云う話をすれば、ここしばらく佳菜子はぼくのなかで個人的に、女子選手の理想に近い演技をする選手になっていたんだけど。やっと戻ってきたな、と云う感じ。入賞できてよかった。

でもって似ていない、と云う話をすれば、宮原さんもまたこれまでの日本女子選手の系譜にはない、ふしぎな個性を持った選手だと感じる。適切な技術と適切な表現のバランスが、演技全体として見るとなんと云うか「独特の完成度」みたいなものに結実する。ミス・サイゴンって選曲の見事さも、このへんは関わってくるのかな。

理華ちゃんが出てくるたびに、うちのつれあいは「荒川さんの凱旋パレードで同じ車に乗っていたあの子が」みたいに感慨を持ち出すのだけれど。猫背もだいぶ解消されたような印象があって、恵まれた身長とも相まって堂々たる演技でした。このままチーム牛タンとチーム味噌カツのハイブリッドとして、姉弟子・荒川静香の正統に連なってくれるといいなぁ。

あとこれもつれあいが云っていたのは、アメリカ勢の底力。あのショートプログラムの結果からのアシュレイとGGの追い上げは、云われるまであんまり意識してなかったけど考えてみると凄まじい。

ちょっと痩せた感じのGGは少し前のアメリカン・チアリーダーみたいな雰囲気が減って、これはこれでひとりの女性、としてより魅力的になったなぁ、とか思う。


ハビエル! クァッド・サルコウ

天才肌でちょっとずぼらな印象、でもPチャンのいないシーズンではまちがいなくビッグスリーの一角。彼の力量からすれば、はじめてふさわしいタイトルを獲得した、正しい場所に立った、みたいにも感じる。

羽生結弦が(その性格もあって)少年ジャンプの主人公キャラ、だとすれば、ハビエルもまた主人公の正統派ライバルキャラだよなぁ、みたいに思ったり。てなわけで結弦、世界選手権ではじめての銀メダル、おめでとう。と云うかクリケットクラブ無双。

テンくんのショートプログラムのトラブルは、あれはないよってぐらいひどかった、と思う。でも、鉄のメンタルが見られたのはそれはそれで(ちょっと邪悪だけど)嬉しかったり。端正でシュア、ソリッドで剛毅。このひとの個性も得難いものだなぁ、とか感じる。

フリースケーティング第1グループ、1番滑走と2番滑走。トリプルアクセルの爽快さのない無良くんに、最後の詰めがどうしても詰め切れない小塚くん。なんと云ったらいいのだろうなぁ。