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街や音楽やその他のものについてのあれこれ。

もしプロフェッショナル・ホメオパスがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら

# タイトルと内容はそれほど関係なくもないです。

前のエントリでぼんやりと、なんか単体では採算が取れそうにないニセ科学的事象のビジネス的価値、みたいなものについて考えてみたりしたのだけど、もうちょっと生々しいあたりでmoon-3さんがいまホメオパシー業界は。と云うエントリをあげていらっしゃる。

これに先行してmoon-3さんは金のためにやっている。と云うエントリをお書きになっていて、これは個々のホメオパスの経営状況について考察した内容だった。そのへんに関わってくるものとしては、NATROM先生がすこし前にホメオパスになるためのコストと云うエントリをお書きになっていて。

「4年制パートタイムコース」では、入学金15万円、年間授業料95万円(一括なら90万円)。4年制というから、15万円 + 90万円 × 4 = 375万円といったところ。金額だけでなく、授業時間等の、時間のコストも支払うことになる。安くはない。

まぁこのへんのコストの高さもひょっとするとセレブリティ・ワナビー層の顧客を惹きつける要素のひとつにはなっているのかもしれないけど、普通はなかなか回収できる金額じゃないよなぁ、とか思う。まぁアレクサンダー陽子氏くらいに著名になって、カウンセリングだけじゃなくて講演会なんかでも稼げるようになればべつなんだろうけど(彼女がどこかのホメオパシー団体の認定になるプロフェッショナル・ホメオパスなのかどうかは知らないけど、とりあえず由井寅子氏と「おともだち」なのは確かみたい)。

で、ここからの引用はmoon-3さんのエントリから。

一般的?なホメオパスとなると、初診10,000~15,000円程度、再診5,000円前後です。
問診は時間制となっていて、基本的に一回60分。初診10,000円・再診5,000円のホメオパスが、一日8時間営業して8人の患者の応対をしたら、(初診・再診それぞれの患者が半々だったとして)一日に60,000円程度を稼げることになります。一カ月に20日営業するとして、60,000円×20日=1,200,000円となるなら、高利益率体質のホメオパシー業界なので、それなりの所得が期待できるはずです。ところが現実はそう甘くありません。

まぁじっさいのところそれだけの顧客がいるのか、顧客数があるのか、と云う話ではあって。

仙台だと長命ケ丘にあるカフェ日本ホメオパシー医学協会のセンターになっていて、それなりに活動してるっぽい(住吉台にもセンターがあることになっているけど、こっちはあまり名前を聞かない)。でまぁ上杉の、こっちはちょっと人気らしいカフェがそのへんのイベントとかを開催するのにちょっと積極的な印象。あと大町にはレメディの販売店があるみたい(行ったことがあるわけではないので本業でなにを商っているのかは不明)。
秋保まで行くとホメオパシーも癒しも波動もマイナスイオンもソマチットもなんでもありのお店とかあったりして、こっちは機会があったら覗きに行ってもいいかな。

まぁネットなんかでもそこそこ見かけるのはこれぐらいで(あとは整骨院関連かな)、隆盛を誇っている、みたいな感じではない。例えばこれから「まちづくり」なんかを教えているらしい宮城大学の某先生あたりがこのへんを絡めて煽ってくればわからないけど(なんかいかにもやりそうで嫌なんだよなぁ)、当面たくさんのホメオパスが食べていけるだけの需要がある状況には見えない。マーケットが重なりそうな、例えばカフェのたぐいはけして少なくはないのだけどね。

日本のホメオパシー団体の最大の顧客はホメオパス(およびホメオパシーを学ぶ学生)なのではないか、みたいにもちょっと考えたことがあって、でもまぁ年間100名のホメオパスを卒業させたとしてもいいとこ4億円とかなのでそれほどでもないのかな、みたいにも思ったり。でもレメディと同じで原価は知れているのでまぁ儲かりはするのだろう。
でも授業料を支払ったホメオパスはかならずしもセレブリティばかりとは限らないわけで、だとすれば回収できなくてそれなりにたいへんなことになっていたりもするのかもなぁ。

でも、喰えなくなって困った末端のホメオパスが暴走して、重い病を抱えた層を本気で取り込もうとし始めたら、それはそれでホメオパス団体にとっては困ったことになるわけで。

しかも、そもそもホメオパスは十分な解剖学や生理学の知識を持ち合わせていません。4年間(ホメオパシー統合医療専門校/カレッジ・オブ・ホリスティック・ホメオパシーの場合)もかけて勉強をしておきながら、人間の肉体がどのような構造をしているのか、内臓や神経がどのような働きをしているのか、ちゃんと理解しているホメオパスが何人いるのかわからない状態なのだそうです。

だってそんなもの、ホメオパシーの学校では学べないもの。学べるのは呪術だけだもの。でもって、そう云う状況のホメオパスが回収に精を出しはじめたら、とてもいやな状況になる。ここのところはmoon-3さんがお書きのとおり。

ビタミンK2不投与による乳児死亡事故や、通常医療による治療を拒否し死亡したいわゆる「あかつき問題」が昨年大々的に報道されホメオパシーが批難されました。これに対してホメオパシー推進団体は様々な言い訳をしましたが、本音では「ホメオパスに本気を出されると困る」ことに気付いたというのです。
これ以上、死亡事故が増えると世間の目が冷たく厳しくなるばかりか、法による規制などが行われホメオパシーが弱体化します(レメディを売りにくくなります)。

これはぜったいにあるんだと思う。でも、原理的にはホメオパシー団体はこの部分で個々のホメオパスを制御する方法を持っていない。大金ふんだくって教えてきたことと矛盾しちゃうもんね。

で、ここから先の部分で、moon-3さんは「信憑性は保証しない」と云うスタンスで、ホメオパシーのビジネスモデルの転換についてお書きになっている。とりあえずそのへんは引用しないので、言及先を直接お読みください(説得力のある内容ではあるけれど)。

でまぁ、それとは別の部分で、個人的にも日本ホメオパシー医学協会は新しいビジネスモデルを模索しているな、みたいに感じる点はふたつほどあって。
ひとつは養成期間1年間、費用35万円で取得可能な「ファミリーホメオパス資格」をあらたに設定したこと。これくらいなら資格取得者が回収に血眼になることもないだろうし(「プロフェッショナル」ではないわけなので)、レメディのヘヴィユーザの確保もできる。
あともうひとつは、船井幸雄との接近ですね。あまりにオーバーグラウンドに広げるとちょっとまずい、みたいな部分も見えてきたので、たぶんMLMの手法とノウハウを本格的に取り入れよう、と云うことなんじゃないかな、みたいに思う。

まぁイノベーション、ですかね(とかって無理やりタイトルにつなげて終わらせる)。