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街や音楽やその他のものについてのあれこれ。

フィギュアスケート2009年グランプリファイナル

日頃は男女シングル以外はほとんど視聴する機会がないのだけど、今回は国内開催だってこともあってアイスダンスもいくらか観ることができた(とは云えぼくのほうでどれだけ観る時間をつくれるか、と云うこともあって、つまみぐい程度だけど)。そう云うわけで自分のなかに蓄積がなくて、ひと組ひと組の演技についてどうこう書けるわけではないのだけど、これはこれでフィギュアスケートを観る楽しみの一側面を堪能させてもらえるものではあった。

あと、羽生くんのJr.ファイナル優勝がなんかローカルにうれしい。チーム牛タンから武史以来の、一線級で闘える男子選手が出るかもしれない。

フィギュアスケートの試合で見せてもらえる技は、どれもが分厚い修練の果実で。実った果実を再配置して、そのプログラムで表現すべきものを構築していく。個々の果実の味わいを基調として、ぼくたちはさらにその複合としてのプログラムを楽しむ。

このあたり、ぼくみたいな素人からすると、どうしても味わいかたが明示されているようなプログラムのほうがとっつきやすい。その意味で今期の高橋大輔織田信成のフリーは楽しむための間口が広い。でも逆に、改めて忘れてはいけないよなぁ、と感じたのは、それが選手の積み重ねられた努力のうえに形成されたものだ、と云うこと。

だから今回の男子シングルについては、あえてクァッドに挑んだ下位の2人、ベルネルと大輔をたたえたい、と思う。いや演技全体を見るとトマシュはだめだめで、どうしてあんたなんでもできるくせにいつもポテンシャル半分しか出せないんだよ、みたいにも思うけど、少なくとも自国では絶対的にトップの位置にいる選手がまったく守りに入らない姿勢を見せた、と云うだけで彼はほめられるべき、みたいに思う。この点では、大輔も同じ。

ただこのふたり、いまのところどうもスタミナに起因する問題があるような。いや、今期に関しては、それは今後2か月で解決すればいい問題にすぎない、とも云えるのだけど。

逆にその意味で、織田のうつけは演技が小さくなってしまったように見える。いや、ここで守ることで後顧の憂いを取り去っておく、と云う戦略は間違いではないのだけれど。エヴァンにも似たような部分はあったかな(どうも大男ならではのダイナミックさがあんまり感じられなかったような)。まぁいずれ、ひどい話だけどオリンピックではいやおうなく「挑む側」に立たされるわけなので、その場での演技を期待することにしよう。

女子はラインナップに真央もカロリーナも欠いたファイナルになった。

ヨナ・キムの演技がどうにもスケール感を欠いていたのが気になる。このひとのスタイルからして、じっさいのところ演技自体のポテンシャルとしてはぶっちぎりの完成度をみせたフランス杯の時点からそれほど伸びしろがあるわけではない。逆にどこか歯車にずれが生じると劣化に向かうわけで、今大会みたいにSP・フリーとも「どうもいまいち」みたいな印象につながる。そう云う意味では損なのかもなぁ。

この歯車が今期ぜんぜん噛み合わないのがジョアニー兄哥。なんかこのひとのこと勝手に鉄人みたいに思ってたけどそんなことはないわけで、ちゃんと復調してきてくれるかなぁ。

明暗を分けたのが追う立場の3人。レオノワなんか、まだ充分にリカバリの方法を見つけてないんだろうから、しょうがないんだろうな。その点では鈴木さんのほうが、苦しんだ過去があるぶん(みたいにはあんまり云いたくないんだけど)したたかだったかな。銅メダル、ほんとうにうれしそうでした。

で、今大会シングル全種目を通していちばん印象に残ったのは、アシュレイのフリーでした。これは自分でも意外。

で、安藤さんなんだけど、うむむ。

このひとのばあい、「まだまだ、これからいける」なのか「まだまだ、今期はだめか」なのか、そこのところの見極めが困難、と云うか実質的に無理。安定してるみたいな云い方はされるけどそれってあくまで当人比で、いまのポテンシャル半分の場所から全開に持っていけるのかどうかがさっぱり予測できない。どこまでいけるのか。

さて、次は全日本選手権になるわけだけど。

とりわけ女子シングルは残り2枠を全選手で奪い合う構図になるわけで、いかに「闘いの場」である全日本とは云え、ちょっと今期は特別な緊張感のなかでの試合となりそう。不安半分、期待半分だなぁ。