Chromeplated Rat

街や音楽やその他のものについてのあれこれ。

楽器の素材

Gizmodeの人類史初の楽器、その役割とは?と云う記事を読んだ。3万5000年前の笛。

ドイツの南部Ach Valleyで見つかったこの笛の素材は旧石器時代の巨大なハゲワシの骨で、長さは8.7インチ。そして5つの穴と、V字型に彫られた部分がありました。このV字部分は、楽器を吹く時に唇をつけるリードのような役割をはたしているのではないかと、この笛を発見したテュービンゲン大学の教授Nicholas Conard教授は推測しているようです。

長さは8.7インチと云うことは篳篥くらいなのかな。音を出す原理はぱっと見尺八みたいだけど、リードのような役割をはたしていると推測されるパーツがあるってことはむしろクラリネットか。

これってたぶん素材が骨だから残っていたんだろうな。楽器の素材としての骨、って云うのはあんまりなじみがなくて、ギターのナットに骨材が使われるケースぐらいしか思いつかないけど、ちょっと調べると中国のほうではいまでも鳥の骨を使って作った笛ってのはある様子。
そう云えば台北の故宮博物院でたまたまチベット特集に出くわして、そこで人間の大腿骨の笛とか頭蓋骨の太鼓とか見たなぁ。たぶん宗教音楽用で、大衆音楽(チベットに固有の大衆音楽って云っていいようなものがあるのかどうか知らないけど)に用いるためのものじゃないんだろうけど。

まぁこれ、現存する最古の楽器、と云うことで、人類が持った最初の楽器ってことはまずありえないだろう、と云う気がする。楽器の定義にもよるだろうけど、管楽器なんて複雑なものより打楽器のほうがそりゃ早かろう。仮に発見されたとしても、楽器だって判断されるかどうかあやしい(もともと打楽器じゃないものをパーカッションとして使う、なんてのはいまでもふつうにあるし)。

また、Conard教授によると音楽を持つ社会と持たない社会で、生存競争に大きな差が出来たのではないか?と推測しているようです。

なんとなくこのへんで、小泉文夫先生が首狩族社会における音楽の役割、みたいなことについて書いていたのを思い出した。ただあれは歌の話だったし、複数のプレイヤーによる合奏(合唱)と云うのが共同作業のディサプリンとして用いられる、みたいな話だった気がするので(これは現代でも、例えばバリ・ガムランなんかは共同体においてそう云う役割を担う)、単純に音楽を持つかどうか、と云う話ではないような気もする。