Chromeplated Rat

街や音楽やその他のものについてのあれこれ。

洗練と本質

いちおう3月ともなると仙台も春で。春、と云ってもあったかかったりはまるきりしなくて、吹きすさぶ風はまだまだ冷たいまま。とは云えその風の匂いはもう違っていたり。
どたばたの生活のなかで休日もそのしわよせを喰らって相当に忙しいのだけれど、そのなかでつれあいが取ってくれたジャズのコンサートを見に行った。コンサートホールでジャズ、と云うのはいつ以来なんだろう。

ぼくは別段ジャズファンではないけれど結果的にジャズは日常のなかで(なまで演奏される音楽としては)いちばん身近に触れる機会が多い。音楽の性格としてセッションが催されやすく、その場にいる機会が多い、と云うことだけれど。なので、「観客席に座ってジャズを聴く」と云う機会はじっさいはほとんどない(場合によっては「観客」でさえなかったりする。まれにだけどね)。

ともかくも風のなかを定禅寺通まで歩く。風は冷たいけれど気温はそんなに低くないので、日なたを選べばスウェードのジャケットだけでなんとかなる。と云うことは春なのだ。たぶん今シーズンでもう一回くらい大雪が降って積もるんだろうけれど。
つれあいの押さえてくれたコンサートは東北放送とみやぎ生協の催す「けんみん1000円コンサート」ってやつで、ジャズメンの名前とかよくわからないぼくとしてはつれあいが一緒にやっていたピアニストの師匠筋、と云うだけの予備知識で聴きにいった。

とんでもなかった。
寡聞にして佐山雅弘と云うピアニストの名前は知らなかったのだけど(たぶん今後も、身近なひと以外は日本人ジャズメンの名前なんか覚えないんだろうけど)、凄まじいピアノトリオを聞かせてもらった。超絶技巧の化け物級ベーシストに、もうなんだか怪獣としか云いようのないドラマー(いやまぁドラマーにはこう云うキャラは多いけど)。佐山さん本人はわりあいとステディなプレイに徹していた感じがしたけれど(つれあいに云わせると「丸くなった」そうだ)、もうパーソネルそれぞれの楽器が喋る喋るうたううたう。全体としてこのトリオのライヴを観るのには、ほんとうはじっさいに払った金額の最低でも5倍はかかるだろうなぁ、と云った感じ。もう2時間ぐらいの演奏時間の最初から最後までぜんぶ見せ場。濃い。濃すぎてちょっと疲れるくらい。
パーマネントなバンドではないようなので、もういちど観たい、と思ってもかなうことではないのだろう。で、(よくわからないけれど)ジャズと云うのはたぶん、そう云うことを惜しむような種類の音楽ではないのだろうなぁ、とか思ったりもする。

で、逆に。
そこで聴いた音楽が、ひごろ接するセッションで聴けるジャズ(それでも仙台では名うてのミュージシャンたちによるものではあるんだけれど)とスリル、と云う意味で大きな差があったかと云うと、その一点ではそうでもなかった、と云うのが、ちょっと面白い部分だなぁ、と思ったりしたのだった。