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街や音楽やその他のものについてのあれこれ。

フィギュアスケートGPシリーズNHK杯

今年は仙台での開催。とは云え見に行ったりはしていなくて。

 滑り出す前から、安藤美姫の出来の善し悪しがほとんど分かるようになってしまった(これではまるでファンのようだ。ぼくの心はいつまでもキンバリーのものなのに)。今回も。

彼女は勝負師で、でもそのこだわる勝ち負けと云うのが、単純な順位ではなくてもう少し抽象的なもので(その辺り少し中野友加里とは違う)。なんと云うか、審判も含めてその会場にいる人間すべてを捕まえて「勝とう」とするときの表情が見られるかどうかで、結局結果が伴う演技ができるかどうかが決まる、と思う。
そして、その「勝つ」ための表情。少し顎を引いて、肩をいからせて、上目遣い気味に射竦めるような視線を飛ばす、ネコ科の大型獣のような凶暴で艶っぽい表情。どんなにミスが重なっても、途中でその表情が出れば、その演技は端倪すべからざるものになる。
今回、それが見られなかった。実は演技の始まる寸前から「勝てないな」とか思った。
でも、まぁこんなところで勝てなくてもいい。シーズンのなかには、まだ全日本選手権も世界選手権も残っている。
まだ戦いの舞台はあるし、戦いに勝つリソースが尽きたわけでは、まったくない。

とか云う話はそれとして、1軍に基本6人しか入れないフィギュアスケート・シングルって競技は、やっぱり厳しいんだろうなぁ、と思う。F1ドライバーについて、「世界で26人しか就けない職業」って言い回しがあったけれど、それで云えばトップ6人以外はみんな2軍、って競技も相当なもんだと思う。しかも採点がよりテクニカルなシステムになってから、怖いもの知らずの子供が変な感じでのしてくるちょっと嫌な部分も見え隠れするし(能力の高さはともかくとして、キャロライン・ジャンのジャンプ前後の汚らしいポジションは勘弁してほしいと思う)。でも、そのなかで1軍に入る連中の運動能力と云うのは、やっぱり違う。今回それをコストナーの演技に感じたのが、自分でも意外だった。

高橋大輔は、あれこれ云っても基本的に今回の大会では別格だったと思う。ずっこけたって優勝するよなぁ、なんて納得させるのは、結局はボディ・コントロールの見事さにあるのかな、なんて感じる(ひどいことを云うと、他の選手に比較して手足が短いのがあの飛び道具みたいなステップを破綻なく成立させている気もするけれど)。

で、ボディ・コントロールと云う話をすると。
武田奈也の演技を見てると大抵のひとは楽しい気分になると思うのだけれど、長身を生かして大きな演技をする彼女が、それでも大味な印象を与えないのは、あるムーヴのなかで自分の手足をどこに配置するか、と云うことについてのコントロールが徹底しているからなんだろう、と思っている。
なんか、表彰台に登ってしまって、彼女の認知度も上がるんだろうけど。それはすごくいいことだし嬉しいことなんだけど、もう少したくさんトリプルを跳べないと、みたいな話もあるし。
ってえか太田由希奈復帰しないのかなぁ。いま復帰しても勝てないか。