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街や音楽やその他のものについてのあれこれ。

科学の手順

ひょんなところで、ひょんなものがつながった。TBS「人間!これでいいのだ」での論文曲解。この「ハイパーソニック・エフェクト」についての論文を発表している大橋力氏は、芸能山城組の山城祥二氏と同一人物だ。このブログで紹介しているJVCガムラン録音の大半を担当されている。

ガムランは可聴閾を超える高周波音をたくさん含んでいる。この高周波音が脳にいい影響を及ぼす、と云うのが基本的な主張のはず。でも、CDは20kHzまでしか入らないので、録音ではその効果は得られない、と云うことをライナーノートでよく悔しがっておられる。

で、この「ハイパーソニック・エフェクト」が本当にあるのか、と云うことについてぼくがどう思うかと云うと、分からないとしか云いようがない。関心もそんなにない。そう云う実利性と云うか現世利益を求めてガムランを愛好している訳ではないし、ともかく(大橋氏ご本人がおっしゃるように)CD録音を中心に聴いているのでは効果は望めないのだ。生でフルセットのガムランに近いものを聴いたのはバトゥブランで観たバロンダンスの伴奏だけだけれど、そもそもバロンって曲そのものはそれほど面白いと思えないのであんまり集中していなかったし、そんなに興味もなかった(でもダンスそのものは面白かった。って云うかバロン可愛いよバロン)。

ただ、大橋氏は自分の録音するガムランのCDのライナーなんかでも、ハイパーソニック・エフェクトについて(もちろん結構触れてはいるけれど)そのご利益を強調することはそれほどない。むしろハイカットされたCDなどで聴くことによる悪影響も想定しているようだ。研究の内容の当否はともかくとして(とは云えちゃんとアメリカのJournal of Neurophysiologyに論文が掲載されているのだが)、ちゃんと科学の手順は踏んでいるわけで。なんと云うか安易に解釈されるとトンデモ扱いされがちな研究だ、と云う認識がある分、今回については当事者たちによる反発が大きかったのではなかろうか、などと思った。