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街や音楽やその他のものについてのあれこれ。

老舗、なのだが

栄光のバリ・ガムラン グヌン・サリのゴン・クビヤール

栄光のバリ・ガムラン グヌン・サリのゴン・クビヤール


バリには一昨年に一度だけ行ったのだけど、ウブドには行かなかった。
何しろ3泊5日の手短な旅行だった。まぁ島全体が観光地とはいえ街中うろうろ好きのおいらとしては、時間的にホテルのあるレギャンからスミニャック辺りをうだうだ歩くのが精一杯で(疲れそうなのでクタ方面には向かわなかった。既に若くないな)、ウブドまで足を伸ばす時間が取れなかったのだった。

日本で買えるガムランの音源は、大半がウブド(プリアタン)周辺の楽団のもの。
ただ、上のグヌン・サリをはじめとして、この辺りの楽団はどうも一般的(伝統的?)なバリの楽団とは成り立ちが違うようだ。
まぁ、厳密には楽団ひとつひとつがそれぞれの成り立ちを持っているんだろうけれど、ウブド周辺の楽団は地縁をベースにその地域の祭祀のために作られたと云うよりは、むしろ最初から観光客に見せたり、芸術としてのガムランを追求したり、と云った目的で出来上がっていることが多いようだ。スマラ・ラティなんかはどうやら芸術大学の卒業生が結成した楽団のようだし、必ずしも同じ共同体の構成員が集っている、と云うものではないらしい。この辺り、前に紹介したゴング・グラダグ(ジャヤ・クスマ)などとは構造的に違う。
永渕 康之氏の「バリ島」には、このグヌン・サリの成立が書かれている。それに基づくと、1931年のパリ植民地博に前後してヨーロッパに渡り講演を行った楽団が、グヌン・サリになったとある。当時は新参の楽団であった、というような書き方がされているが、でも単純に引き算しても3/4世紀の歴史がある訳で、立派な老舗である。
どちらにせよ我々外国人は、外国人向けの演奏・講演にしか触れられないし(だからといって偽物、ということでもないし)。

歴史があるとはいえゴン・クビャールの楽団なので、演奏はダイナミックでスリリングだ。でも、なんかそれだけに聞こえる(それだけが欲しいときもあるし、そう云うときにはいいのだけど)。ネットで転がっている、生で見たことのあるひとたちの評価となんだか極端に違うのはどうしてなのかなぁ。